寺社・大型建造物もクラシタス

妙見山 黒石寺 様

岩手県最古の仏像が眠る古刹

岩手県の奥州市にある黒石寺様は、江刺三十三観音、奥州三十三観音の霊場として多くの信者を集める由緒ある古刹だ。貞観4年(862年)造立の国指定重要文化財である本尊「薬師如来坐像」を始め、10数体もの平安時代の仏像が安置されている。また、毎年旧暦正月7日の夜から翌朝にかけて繰り広げられる、裸の男と炎のまつり「黒石寺蘇民祭」は貴重な民族的遺産である。

趣きはそのままに強固に復元

黒石寺様とクラシタスとの付き合いは35年前に始まり、以来厚い信頼を得て数々の
施工を担ってきた。今回ご依頼頂いたのは、100年以上前に造られた375㎡に及ぶ土塀の復元工事だ。平成6年に改修工事を行っていたが、平成23年の東日本大震災により土台である石垣の歪みが発生し、土壁が剥離したのだ。担当した菊池より、崩れにくくするため土壁に一定の間隔で間柱を入れるご提案をするが、既存の外観の趣きを変えたくないとのご意向を頂く。そこで、土壁の下地である「木舞」に使われている〝葦〞の代わりに〝竹〞を用い、さらに竹と竹の継ぎ目を特殊な繋ぎ方で結ぶことで強度を増した。その後竹木舞の両面から藁を混ぜ発酵させた壁土を繰り返し塗布し、コ テ鏝で表面を美しく整えていく。最終工程として壁土の乾燥後上塗り材を塗装し表面を固めることで、さらに丈夫に仕上げた。こうして風情ある外
観はそのままに、災害や経年劣化にも耐えられるような強固な造りを実現した。

研ぎ澄まされた 一流の職人技に感服

この伝統的工法による修繕工事を担当したのは、秋田県角館の武家屋敷や文化財の修復に携わる熟練の職人だ。現場をご覧になられてきたご住職様より「たった3人で、これほどまでの工事を3カ月で仕上げるとは驚くばかり。無駄の無い流れるような作業で感服しました」とお褒めの言葉を頂くことが出来た。

確かな技術で守り継ぐ みちのくの歴史

最後に美しく仕上がった土塀を眺め、ご住職様がこう語ってくれた。「実は、来訪された方から崩れたのもそれなりに趣があって良いですね、との声もあり6年もの間修復せずにいたんです。しかし今こうして完成された仕上がりを見ると、やはりお願いして良かったと心から思います」。それに対し菊池も「素晴らしい仕事に巡り合えて光栄です」と微笑んだ。侘び寂びを感じさせる姿はそのままに、確かな技術で耐久性を備え蘇った黒石寺様の土塀。平安時代に平泉文化が花開いたこの地で、その場所にふさわしい趣深い景観が今日も訪れた人々を魅了している。