技術と心を教えてくれた指導者との出会いに、感謝する日々

クラシタス会 板金工事担当
遠藤 一夫

  • 大工の道を断念し、一念発起して飛び込んだ板金業の世界

    「外壁サイディングの納め方がとても綺麗で、人情味ある職人さん」 遠藤さんについて皆がこう答えます。 遠藤一夫さんと弊社との出会いは2012年。これまでは岩手に拠点を置き仕事をしていましたが、2011年3月11日の東日本大震災により石巻市内の自宅が浸水。事前に状況は聞かされていたものの石巻に帰ってみると想像を絶する光景に居ても立ってもいられず、ボランティアを行ないながら、地元石巻に腰を据え、職人としての集大成の地にすると決断したそうです。 実は板金業としてのスタートも、ここ石巻市でした。最初は大工を志したものの、木材アレルギーによる喘息に悩まされ断念。「できれば同じ業界の仕事を」と、23歳で地元の板金会社へ入社。加工から金属の「納め方」まで、親方からマンツーマンで手ほどきを受けました。「『一箇所でも納め方が気に食わないなら、やり直せ』という位、仕上げにこだわりを持った親方でした」と、当時を振り返る遠藤さん。5年間一人弟子として働きましたが親方の厳しさから、飛び出してしまったと言います。「その後数年は、ずっと後悔していましたよ。親方からもっと学ぶことがあったな・・」。外に出て初めて、自分の親方は段取りから加工、納め方まで、「一流」だった事に気付けたそうです。10人職人がいれば、10人のやり方がある。その意味で、職人としての第一歩をその親方から学べたことは自分にとって幸運だった、と述懐します。

  • 「感謝すること」

    岩手での仕事は15年にも及びましたが、「ここでも人との出会いがあった」と遠藤さんは振り返ります。 数多く棟数をこなす内に、「仕事=作業」と、早く終らせる事が職人の技術だと思ってしまっていたある時、「現場で指導者の方に『お前は、何をしにきているんだ!』と一喝されましてね」と、当時を思い出し思わず苦笑いされる遠藤さん。 一瞬カッとしたものの、その晩は眠れず、何の為に、誰の為に、誰のお陰で自分が職人をさせてもらっているのかをよく考えたそうです。明日の飯も大事だが、それより先にお客様や親方からの信頼が先・・・以来心を入れ替え、誰よりも先に現場入りし、積極的に仕事へ関わるようになりました。「するとまもなく、『明日から現場はお前が仕切れ』と言われてね。今思うと、心根の部分を正されたんでしょう。最初の親方には技術を教わって、岩手の親方には心の持ち方を教わった。そんな気がしています」と現在の自分のルーツを語って頂きました。 話を終えた遠藤さん。最後に「一つ悔いがあるんです」と遠慮がちに切り出しました。「実は、最初にお世話になった親方に、面と向かって感謝の意を伝えられずにいるんです」。この場を借りて、ひとりの職人としてあの時の指導にお礼が言いたい。「ありがとうございました」 この言葉には親方から受けた感謝を被災地で返すといった報恩感謝の意味が深く込められている。