東北伝説紀行

福島県会津若松市 白木屋漆器店

大正時代に建てられた3階建ての洋館。
そこでは、会津の伝統工芸「会津漆器」が販売されている。
古き和の心を伝える手仕事と西洋風の建物。
一見、不思議な取り合わせにも思えるが、そこにはある願いが込められていた。

絶えかけた 伝統工芸を守るために尽力

会津若松を代表する伝統工芸といえば「会津漆器(会津塗)」。そもそもの始まりは1590年、蒲生氏郷(※)が手工業を奨励したことに端を発する。氏郷は前領地であった日野(滋賀県)から木地師(きじし)や塗師(ぬりし)を呼び寄せ、先端技術を伝授。これによって会津塗の技術は飛躍的に進歩を遂げ、漆の栽培から塗りの仕上げまでを一貫して手がける一大産地となっていったのだ。
1868年。戊辰戦争の戦火により会津塗は壊滅的なダメージを受けるも、とある漆器店が気を吐き、その維持復興に努めた。それが今回紹介する建物の施主である「白木屋」だ。創業は1720年。同店は海外へいち早く目を向け、輸出のための販路確保に走った。そしてその構想は当たる。水や衝撃に強く、何より美しい漆器は西洋に於いて「ジャパン」と呼ばれ、さらにその後、ヨーロッパの美術界に巻き起こる「ジャポニズム(日本ブーム)」の一翼も担うことになったのだ。

会津に初めて登場した 3階建ての洋館

この白木屋が1914(大正3)年に竣工した店舗が、会津初の洋風建築「白木屋
漆器店」である。
一見洋風だが構造は木造で、工法は耐火性に富む土蔵造りの3階建てだ。建築当時は背の低い建物が立ち並ぶ中で、ひときわ目を引く存在であったという。意匠はルネサンス様式が採用された。明かり取りのドーマー窓が配された屋根は、スレートを半重ね葺きにして荷重を少なくしている。
外壁は、オリジナルはモルタル洗い出し仕上げ。しかし当時は、市内の建築でモルタルの使用がまだほとんどない時期だったため、職人が、壁土の要領で練ったモルタルを一晩寝かしてしまい、使い物にならなくなったこともあったという。こうして試行錯誤の中、会津初の洋風建築は完成したのだ。
現代にも通じるモダンさをたたえる洋館は、店舗として今なお現役だ。土蔵造りの洋館内では、現代風のアクセサリーから古典的な漆器まで1000点以上のオリジナル品を展示販売する。

倒れてもまた立ち上がる 気概を映した建物

明治維新を敗軍として迎えた会津。しかしその後は、商業を中心として復興を果たした。そんな機運の中、白木屋は「世界と肩を並べるにふさわしい店舗を作ろう」と、最先端の洋風建築を取り入れたのかもしれない。
世界に誇るものづくりの国・日本の魂。そして倒されても、倒されてもまた立ち上がる会津人の気概を、この建物は今に伝えているのかもしれない。

※蒲生氏郷(がもう うじさと)・・・戦国時代の武将で茶を千利休に習い文武両道に通じたと伝えられている。

さあ「伝設」をその目で見よう!

福島県会津若松市 白木屋漆器店
●住  所/福島県会津若松市大町1-2-10
●営業時間/9:00~17:30
季節により定休日が異なりますので詳しくはHPをご覧ください。
●アクセス/JR会津若松駅から徒歩15分、タクシー3分
車では会津若松ICより10分
TEL 0242-22-0203