職人としての誇りを持ちつつ さらなる高みを目指して

クラシタス会 建具工事担当
今野正彦

  • 大切なのは「精度」ぴたりと収まる仕上がりを目指し地道に丁寧に

    精緻な木組みによる障子戸やふすま。手作りの建具はいまや贅沢品となりました。そんな木製建具を昔ながらの工法で、今なお作り続けているのが今野さん。父親の代で掲げた看板を、二代目として守り続けています。 17才で大工の下に弟子入りし、3年の修行の後、正式に父に師事したのは20才の時。幼い頃から「跡継ぎに」と言い聞かせられ、この道に入ることに迷いは一切無かったそうです。それまでの大工の修行も仕事を継ぐための基礎を身に付ける為でした。 建具作りは比較的容易な「ドア」からスタートし、次に「ふすま」、最後に「障子戸」が作れるようになればようやく一人前です。例えば「桟(さん)」は彫った凹凸を合わせるホゾ組みという手法で組み上げますが、凹凸がピタリと合うよう、何度もヤスリを掛け微調整する必要があります。この仕事は何より精度が重要。一つひとつのパーツをいかに正確に仕上げるかが勝負なのです。 建具の立て付けも今野さん自身が現場で行います。建具の寸法がいくら正確であっても、現場の柱や敷居に微妙な傾きがあり、うまく立て付けられないことはよくあること。「その場で瞬時に”どこを削るか“を判断するのも、私たちの仕事なんです。そしてぴったり収められたときに、この上ない気持ちよさがあるんですよ」と今野さんは笑顔で語る。

  • 現状に満足してしまったら職人にその先はないさらなる向上を目指す日々

    最近では、父親の代から作っていた「家具」や、割烹向けの「刺盛りのゲタ」のような一点ものの食器など、仕事の幅が広がってきました。近年増えてきたのが「古い建具の修繕」です。「古い建具に触れると、勉強になることが多いんですよ。昔の指物師はいい仕事をしていましたから。例えば木と木を組むときに竹釘を使っていたり、釘の頭をつぶして隠したり。そうした一つひとつの仕事に対する繊細さや厳しさから、参考になることは多いですね」。 自身の代でとった3人の弟子も全員が独立し、職人としての評価も獲得した今、次なる目標は、と話を向けると、今野さんは力強くこう答えました。「今でも、ものづくりに”納得すること “ってないんですよ。自分の仕事に満足してしまったら、その先がないんです」。ベテランとなった今でも向上心を失わない今野さん。これからもお客様の笑顔を思い浮かべながら、温かみのある木製品の製作をしていきます。