アスリートに負けない 世界レベルの職人技の祭典

クラシタス会 寺社建築担当
渡部 敦史

  • 技能五輪 全国大会

    2012年7月、イギリス・ロンドンで夏季オリンピックが開催される。世界各国から集まった超一流のアスリートがその技を競う祭典。白熱の戦いがもうすぐ始まる。
    さて、大工をはじめとする技能者の世界においても、オリンピック同様の熱き戦いが繰り広げられる「技能五輪」と呼ばれる大会があるのをご存知だろうか。 毎年秋に開催される「技能五輪全国大会」。競技種目は、「左官、建具、建築大工」などの建築に関わるものから、「電子機器組立て」「美容」「洋裁」「日本料理」など、実に多種多様で、その種類は45種目にも及ぶ。 「技能五輪全国大会」は、青年技術者の技能レベルの日本一を競うことがその趣旨であることから、参加資格は満23歳以下と限定されているのも興味深いところだ。 「技能五輪」の競技の選考は、非常にハイレベルなものであり、たとえば、「建築大工」競技では、まず課題に対して、木材を与えられる。そこから、原寸図作成→木ごしらえ(カンナがけ)→墨付け→きざみ(加工仕上げ)→組立て。これらの作業を、2日間での合計12時間以内で仕上げる。ただし、途中で作業を間違えれば、即失格となる。ひとつのミスも許されない厳しい競技なのだ。

  • ハイレベルの競技選考で銀メダルを獲得!

    全国大会では、各県の予選を勝ち抜いた、80人余りの精鋭が、技を競う。さらに、この大会での優勝者は、「技能五輪国際大会」への出場資格を手にすることが出来る。 2011年、この「技能五輪全国大会」の建築大工部門で、弊寺社社建築の匠「藤井工務店」棟梁の下で修行をしている渡部敦史さんが銀メダルを獲得した。大きな賞賛に値する結果を残した渡部さんではあったが、メダルがゴールではなかったこと。この大会が、あくまで自分の腕を試す為の通過点に過ぎないものであり、決して自己満足では終らないということを話している。「お客様の心を掴んでこそ一流」と、若くして心得ている。それは、彼が師や兄弟子から学んだことであり、自分の信条としていることだ。 「常に超えるべきは自分自身」。内なる闘志を胸に、一心に木材を見つめる若き職人に、将来の匠の姿を垣間見た。