屋根をリフォームするために知っておくべき構造と役割を徹底解説!
2022.01.10
屋根をリフォームするために知っておくべき構造と役割を徹底解説!
屋根をリフォームする際に、専門用語が出てくるとどの部分の話なのか、全く分からないですよね。
プロの業者と打ち合わせをする際に、少しでも屋根の構造や部材の用語を知っているだけでも理解が深まります。
打ち合わせもスムーズに行えるメリットもありますので、覚えておきましょう。
業者の人や職人さんとの会話も弾み、より楽しくなるはずです。
この記事では、屋根の構造や役割、屋根に関する用語を解説します。
木造住宅の屋根構造と用語を知っておこう
住宅建築の構造の中で、屋根に関係する用語はとても多いといえます。
屋根を構成している部材の名称などを入れれば、本当にたくさんあります。
木造住宅の屋根構造について、それぞれの名称と役割を解説します。
・小屋組(こやぐみ)
屋根の構造の総称を小屋組といいます。
屋根の下と天井の間を小屋裏といい、一般的には屋根裏や天井裏とも呼ばれています。
小屋裏の内部には小屋束(こやつか)が建てられ、その上には母屋(もや)と呼ばれている材木が水平に取り付けられています。
屋根の最も外側(軒)の母屋を軒桁(のきげた)といい 、屋根の一番高い部分(棟)の母屋を棟木(むなぎ)といいます。
よく新築工事で行う上棟式は、この棟木を取り付ける儀式のことを指します。
・屋根の下地
屋根の下地構造は、母屋と垂木(たるき)、野地板で構成されています。
工程は、軒から棟へ母屋が何本か水平にあり、母屋の上に垂木と呼ばれる角材を母屋と交差するように取り付けます。
垂木は、軒から棟へ屋根の傾斜の角度に沿って、必要な本数を取り付けるイメージです。
その垂木の上を塞ぐように、野地板(のじいた)と呼ばれる畳1枚の大きさがある構造用合板を張って屋根の傾斜面を作ります。
野地板を全て張り終え、屋根の面が完成すると次にルーフィングという防水シートを野地板に張っていきます。
ルーフィングは、屋根材と野地板の間で雨漏りを防ぐ大切な役割をしているのです。
野地板の上にルーフィングを貼ることができれば下地の完成です。
ここまでの工程で、屋根の形が出来上がります。
・屋根の仕上げ
屋根の下地ができれば、次に仕上げの屋根材を張っていきます。
日本瓦などの陶器瓦を葺く際は、瓦を引っ掛ける桟木(さんぎ)と呼ばれる角材を屋根の傾斜面に水平に取り付けます。
その桟木に引っ掛けて瓦を葺いていくのです。
瓦以外のスレートや金属系屋根材は、桟木が無くルーフィングの上に直接施工していきます。
あとは、雨が漏らないように防水処理である雨仕舞いを、水切り板金を使って行います。
板金は色々なところに使用され、たくさんの種類があります。
屋根と外壁の接合部である壁際には雨押さえ板金が取り付けられ、屋根が谷になっている箇所には谷どい板金の取り付けが必要です。
このような板金は、瓦屋根だけではなくスレート屋根にも使用されます。
板金は屋根形状によって雨漏りを防ぐ大切な部材です。
用語の解説
屋根の構造を簡単に説明しましたが様々な用語が出てきました。
ここまで出てきた用語を簡単に解説しましょう。
・小屋束(こやつか)
母屋を支える材木で垂直に立っている部材
・母屋(もや)
屋根に対して水平に取り付けられている材木で垂木を支える下地となる部材
・軒桁(のきげた)
最も外側で軒にある母屋のこと
・棟木(むなぎ)
最も高いところにある母屋のこと
・垂木(たるき)
母屋に対して交差するように取り付ける角材で軒から棟に通す部材
・野地板(のじいた)
垂木の上に貼る屋根の面を形成する構造用合板
・ルーフィング
野地板の上に貼る防水シート
・桟木(さんぎ)
日本瓦を葺く際に瓦を引っ掛ける角材をいう、ルーフィングの上に取り付ける
・板金(ばんきん)
金属で作られた板で雨漏り防止のためにあり、水切り板金、雨押さえ板金、谷どい板金などがある
たくさんの用語がありますが、覚えておくと任せっきりになる葺き替え工事も、業者との打ち合わせで役に立ちます。
屋根の構造と関連する用語
・屋根を葺く(ふく)
屋根材を張って仕上げることを指します。
貼るとか張り替えではなく屋根材に関しては葺くいう表現をします。
葺くという表現から、屋根材を取り替えることを葺き替えというのです。
・雨仕舞い
屋根から雨漏りがしないように、防水処理することを指します。
屋根や外壁で雨水を防ぐ部位に水切り板金が取り付けられます。
他にも必要な箇所で板金が使用され、正しく取り付けられていないと雨仕舞いが悪いという表現をします。
雨漏りを発見した場合、まず板金が劣化していないか、強風などでずれたり外れたりしていないか点検することが必要です。
・勾配
勾配とは、屋根の傾斜角度のことを指します。
屋根には様々な角度の勾配があり、その勾配によって使用できる屋根材が決まります。
傾斜角度が緩い勾配を緩勾配(かんこうばい)といい、急な勾配を急勾配というのです。
屋根の勾配の単位は、寸単位で表現し一般的な屋根勾配は、3寸から5寸勾配が多く使われています。
屋根勾配を決める基準は、道路斜線制限や北側斜線制限の建築基準法を元に決められることが多くあります。
屋根は構造上、勾配が急な方が水が溜まりにくく水はけが良いです。
急勾配であれば雪も積もりにくく、屋根への負担が少ないことがメリットです。
しかしその反面、急勾配は屋根の面積が増えるので葺き替えなどメンテナンスにやや費用がかかります。
また、屋根勾配が6寸以上ある場合、安全上屋根専用の足場を設置しなければなりません。
外壁部分の足場に加え屋根足場も必要なので、費用は少し高くなってしまいます。
我が家の屋根は何寸勾配なのか、知っておくと業者とのリフォームの打ち合わせがスムーズに進みます。
・妻
妻とは、最も一般的な切妻屋根の雨樋が、取り付けられていない方の面を指します。
見た目としては、屋根が三角形に見える面です。
妻は、ケラバとも呼ばれ外壁から飛び出している部分をいいます。
一方、雨樋が付いている面を軒側といい、平側とも呼ばれることがあります。
切妻屋根の場合は、妻側の屋根の先に破風(はふ)と呼ばれる板が取り付けてあり、反対に雨樋がついている軒側の屋根先には、鼻隠し(はなかくし)と呼ばれる板が付いています。
寄棟屋根の場合は、妻側が無いので、四方全て軒側となり雨樋と鼻隠しの板が取り付けられているということになるのです。
・軒先
軒先とは、屋根の先端部分を指します。
外壁から軒先までの長さを軒の出(のきので)といい、軒の出が長いと外壁を守る良い建物といわれています。
また、軒先の裏面には屋根の構造体である垂木や野地板を隠すために、軒天(のきてん)というボードが張られているのです。
屋根の内部に空気の流れを作るために、軒天ボードに小さな穴がいくつか開いている部分があります。
軒から棟にかけて空気の流れを作ることにより、湿気や結露の防止、夏の暑い空気を逃す効果があります。
・棟
棟とは、屋根の最も高い部分を指します。
日本瓦のような陶器瓦は、棟に棟専用の瓦を用いられますが、スレート屋根や金属屋根は棟板金と呼ばれる板金が使用されます。
棟板金の素材は、腐食に強いガルバリウム鋼板が採用されることが多いです。
また、棟には小屋裏の自然換気を目的とした、換気棟と呼ばれている穴の空いた棟板金を取り付けることがあります。
棟板金は雨風の影響で固定してある釘が緩み、ずれたり外れたりすることがあり、台風や強風で飛ばされる危険性もあるので、定期的な点検を怠らないようにしましょう。
用語の解説
ここまでに出てきた用語について解説します。
・破風(はふ)
切妻屋根の妻側(正面から見て三角形の山形部分)で、屋根の先端部分に取り付けてある板
・鼻隠し(はなかくし)
妻側とは反対の軒側に水平についている板で、雨樋を取り付ける板としての役割もある
・ケラバ
妻側で外壁からはみ出した屋根部分
・軒の出
外壁からはみ出した部分の長さ
・軒天
ケラバの裏部分で軒天ボードが張られている
屋根の周囲にも、様々な部材が存在するので参考にしてください。
屋根を構成する部材の役割
屋根の構造と関連する用語を説明してきました。
その中に出てくる屋根の重要な部材の役割を詳しく解説します。
・垂木の役割
垂木とは、野地板を支えるための部材のことで、屋根の頂点である棟木から一番下の軒桁の間に取り付けられた細長い材木のことです。
垂木は屋根勾配に沿って取り付けられています。
垂木の役割は、屋根の面が凸凹にならないように真っ直ぐに屋根を構成するためです。
垂木の取り付けが、誤差なくしっかりしていないと野地板が正確に張れないため、屋根の面に歪みが生じます。
また、垂木の幅や厚みは屋根材に応じて太さを合わせる必要があります。
比較的軽い屋根材であるスレートやガルバリウム鋼板などと、重量がある陶器瓦とは太さを変えなければなりません。
それに加え、軒の出が長いと軒先を支えるものが無いため、屋根の重量に合わせてより太く厚みのある垂木にする必要があります。
垂木は屋根の強度にも関わる骨格部なので、重要な役割を担う部材だといえます。
・野地板の役割
野地板とは、屋根を葺くための下地材になる板のことです。
軒から棟まで、勾配に沿って取り付けられた垂木を、塞ぐように並べて釘を打って固定していきます。
凹凸や波打ったりしないように、真っ直ぐに施工しないと屋根材も同じように歪みが出てししまいます。
リフォームで屋根を葺き替える際は、野地板が腐食していたり劣化していないかを確かめた上で行いましょう。
屋根材だけ新しくなっても、下地である野地板が腐食していては、屋根に不陸が出たり酷くなると抜け落ちたりすることもあります。
築年数の古い建物は、屋根材を撤去した後にルーフィングを含めて野地板の寿命を考え、張り直すか上からの増し張りをするかを業者と相談しましょう。
野地板は屋根材を支える大切な役割を担い、台風や強風の際にも耐えられる強度を保つ必要がある重要な部分です。
・ルーフィング
ルーフィングとは、野地板の上に貼る防水シートのことです。
下葺き材とも呼ばれ、アスファルトを原料として作られたものが多く、アスファルトルーフィングとも呼ばれています。
普段は、屋根材と野地板に挟まれ目視することができないので、劣化状況が分かりません。
リフォームで屋根を葺き替える際は、ルーフィングの性能や耐用年数も確認すると良いでしょう。
また、戸建て住宅の雨仕舞いは屋根本体や水切り板金などの一次防水と、ルーフィングシートの二次防水があります。
一次防水だけでは、台風時の強風や大雨に見舞われると、わずかな隙間から雨水が侵入します。
そうした時でも小屋裏に雨漏りしないようにするのが、二次防水であるルーフィングです。
小屋裏を覗いた際に雨漏りのシミを発見したり、ひどい場合で室内に雨漏りがある時はルーフィングが劣化し破れたり剥がれたりしている可能性があります。
リフォームで葺き替える場合は、長持ちする性能の良いルーフィングを使用しましょう。
・破風板
破風板とは、妻側にある屋根の先端に取り付けてある板のことです。
屋根の切り口にあたる場所にあり、屋根そのものを雨風から守る役割をはたしています。
一方、雨樋の付いている軒先に付いている板を鼻隠しといい、雨樋の取り付ける下地材としての役割があります。
破風板の素材は、昔は木製でしたが近年では窯業系の素材が主流です。
破風板は屋根の端にあることで、雨風の影響が受けやすく劣化しやすい傾向にあるので、定期的なメンテナンスが必要です。
・軒天
軒天とは、軒先の裏面に取り付けてあるボードのことです。
軒天井や軒裏天井などとも呼ばれています。
素材はケイカル板(ケイ酸カルシウム板)が主流で耐久性や耐火性、耐水性に優れています。
軒天の役割は、野地板や垂木、母屋を隠すことで雨風や火災から守ることです。
軒天が無いと様々な部材が露出し腐食の原因になったり、火災時に火のまわりを早めてしまいます。
また、軒天の表面に穴が開いていて、屋根裏に溜まった熱気や湿気を排出する役割もあります。
軒天も屋根のメンテナンスをする際には点検し、劣化状況を確認することが重要です。
まとめ
屋根の構造とそれぞれの部材の役割や用語を解説してきました。
屋根は様々な部材で形成され、成り立っていることが分かります。
どのような構造で作られて、それぞれの名称や役割を少しでも知っていれば業者や職人さんとコミュニケーションを取ることで、質問や理解を深めることができます。
より良い屋根のメンテナンスをするためには、知識を得ることも必要ではないでしょうか。