屋根のリフォームで室内を涼しく!過ごしやすい住まいへ!

2021.07.30

夏になると熱中症で倒れてしまう人が増加するという報道を見聞きします。
実は、そのニュースを見ている自宅にこそ熱中症になる危険性が高いという事実があります。
総務省消防庁の資料によると毎年夏に熱中症で救急搬送される人数は、約10万人にも及び、そのうち住宅の中で緊急搬送された人は
全体の約40%になります。家の中にいるから安心という訳ではないことがこの統計で分かります。

 

日中はリビングで、夜間は寝室で発症する人も多く、1日を通じて油断ができない状況です。
では、なぜ夜間寝ている時に熱中症にかかってしまうのでしょうか?
ひとつの可能性として、日中屋根が焼けてしまうほど熱くなり、夜間にその熱が室内に放出されているということが考えられます。
その屋根の熱が原因で夜間でも室内の気温がじわじわと上がってくるのです。
この記事では、屋根の夏の暑さ対策として「屋根のリフォームで室内を涼しく過ごしやすい住まいへ」をテーマに徹底解説いたします。

 

家が暑くなる原因と屋根の遮熱効果について!

実は屋根材の多くは、遮熱機能を持ってはいません。
屋根への直射日光により屋根の表面温度が上がり、屋根材の表面が熱くなり、その熱が建物内に伝わってしまいます。
そこで屋根の遮熱対策として「遮熱塗装をする」または「遮熱性能のある屋根材に葺き替える」ことが必要となります。

遮熱塗装をする場合、外壁などの塗り替え時期に一緒に屋根も塗装することをお勧めします。
そのメリットは、外壁塗装も足場が必要なため、屋根、外壁両方一度に塗装することで足場費用が節約できます。
折角塗装をするなら、外壁・屋根とも遮熱効果のある塗装をすることが効果的です。


金属製の屋根材について
近年では、耐久性があり軽量なガルバリウム鋼板がよく使われていますが、金属なので熱伝導は高く熱くなることには変わりはありません。
金属屋根は、厚さが薄く屋根本体に密着していることもあり、室内に熱が伝わりやすので遮熱効果のない金属屋根には、遮熱塗装が必須といえます。

 

また、一般的に使用されている屋根材のスレート瓦は、屋根材の厚みが5mm程度と薄いため、熱が小屋裏に伝わりやすい性質があります。
対策は、やはり遮熱効果のある塗装をすることで表面温度を上がらない状態に抑えることです。

 

以上、屋根から熱が室内に伝わって暑くなってしまう原因と遮熱塗装についてご案内しました。

小屋裏にこもった熱気を排出する換気棟を紹介!
小屋裏は、日光に照らされた屋根の熱気でいつも高温の状態です。
天井には断熱材が入っているため熱伝導のスピードは遅くなるものの、焼けた屋根の熱は少しずつ室内へと伝わります。
そこで、小屋裏の温度を上がらないようにするために、こもった熱気を排出してくれる換気棟という屋根の部材をつけることが効果的です。

切妻屋根や寄棟屋根の棟の部分にこの通気孔を設ければ、小屋裏の熱気を屋外へと排出することができます。
暖かい空気は、上昇するという自然現象を利用した仕組みで熱気を排出するため動力が不要なため電気代がかかりません。
熱気だけではなく、湿気も排出する機能もありますので梅雨時の湿度の上昇や結露の防止に効果を発揮します。

設置方法は、屋根の棟に換気用の通気孔を設けてこれまでの棟板金と交換するだけの簡単な工事でできます。

実は小屋裏換気にも種類がありますのでご紹介いたします。

 

・妻換気
切妻屋根の妻部分(ケラバの下)に換気口を設けて換気する方法です。
屋根に対して水平にしか換気が行えないことにやや効率の悪い点が気になる換気方法ですが、全く換気が無いよりは良いレベルです。

 

・軒先換気
軒先や軒天に換気口を設けて換気をする方法です。同じ高さの軒先から吸気と排気を行うため、効率はやや下がりますが、一定の効果はあります。

 

・軒先と妻換気の組み合わせ
軒先から吸気し妻部分の換気口から排気を行うため、吸気口と排気口に高低差があり暖かい空気が上昇することで空気の循環が行えます。
理想的な換気方法のひとつです。

 

・軒先と換気棟の組み合わせ
軒先から吸気し棟から排気する最も効率の良い換気方法です。
低い位置の軒先と屋根の頂点の棟に空気の流れを作ることによって、暖かい空気の上昇する性質を生かした方法です。
換気棟は、切妻屋根や寄棟屋根によく見られますが、瓦の屋根や片流れの屋根にも設置することも可能です。

 

屋根の暑さ対策に必要な遮熱塗料と断熱塗料について
屋根の暑さ対策は、さまざまな方法がありますが、「屋根の遮熱塗装・断熱塗装」が手軽に低コストでできるリフォームです。
ここ10年から20年の間で住宅塗料の進化が目まぐるしい状況です。
塗装の寿命が約10年程度のシリコン塗料、15年、20年超えるフッ素、無機塗料の登場で次のメンテナンスまでのスパンが長くなりました。

塗料の進化は目覚ましく、セルフクリーニング機能をもつ低汚染塗料や建物内部の結露や腐食、塗膜の膨れを抑制する透湿性塗料
塗膜が劣化する原因物質(ラジカル)の発生を抑えて耐候性を高めたラジカル制御型塗料など付加価値のついた機能性の高い塗料が
非常に多くなってきました。
その中でも今最も人気の高い機能性屋根塗料は、「遮熱塗料」と「断熱塗料」です。

似ているようで性質が全く異なる塗料なので、暑くなる原因と違いを知っておきましょう。
暑さを抑えるには、太陽光の赤外線を防ぐ必要があり、遮熱、断熱には、非常に重要なポイントです。

 

・遮熱塗料
塗料に特殊な着色顔料を入れて、赤外線を反射させる機能をもつ塗料です。
遮熱塗料が赤外線を反射させることで、屋根材の表面の温度上昇を防ぎます。
その効果は、屋根材の表面温度が一般塗料よりも10℃~15℃低く、その効果によって室内温度は、1~3℃も下がる効果があります。

 

・断熱塗料
断熱塗料は、遮熱塗料の考え方とは異なり、赤外線を反射させるのではなく塗膜に溜めて建物内部に伝わりを軽減させる機能を持っています。
遮熱塗料よりも暑さ対策は弱いですが、冬の暖かい空気を逃しにくくするため、オールシーズンに効果のある塗料です。

 

遮熱塗料と断熱塗料の違い
遮熱塗料:夏の暑さ対策になる。熱を反射させる。屋根が受ける熱の室内への影響を低減する。
断熱塗料:年中快適に過ごせる。熱の伝わりを遅くする。室内の温度を保ち逃さないようにする。

上記のことから「遮熱塗料」は夏の暑さ対策に適しており、「断熱塗料」は年中快適に過ごしたい場合に適しているということが分かります。
夏の暑さが我慢できない時は遮熱塗装のリフォームがおすすめです。

 

色と熱の関係性
暑さ対策には、屋根の色の選択も影響を及ぼします。
黒など濃い色は熱を吸収しやすく、白など薄い色は熱を反射します。
日本の住宅の屋根の色は、外壁との相性もあり濃い色が多いのが現状で、色のみを考えれば暑さ対策に反していることになります。

同じ遮熱塗料でも、全日射反射率が黒色30%白色90%という結果があり、明らかに色によって差異が生じます。
だからといって屋根の色を汚れの目立つ白色にする人は、ほとんどいません。
どうしても壁の色に合うように、黒っぽい濃い色の屋根を選ばれる方が多いですが、暑さ対策を考えれば
出来るだけ薄いトーンの色目に塗装するのがおすすめです。

 

屋根材別に断熱性を徹底比較
なぜ屋根材によって断熱性に差が出てくるのでしょうか。
その理由は、通気層の有無が関係しています。

そもそも断熱とは外気の熱を室内に取り込まない仕組みのことです。
夏の気温は30℃を超え、屋根の表面温度は素材に関係なく70℃を超える熱さになります。
屋根材の断熱性が低い場合は、熱が室内に伝わってしまうため、室温の上昇が避けられないのです。
屋根の部材は、密着している部分から熱伝導によって熱が入り込みます。

しかし、その密着している部分に空気層があれば通気性があり、熱伝導によって侵入する熱量が軽減できます。
その結果、室内は比較的涼しい状態になるのです。
この通気層による断熱効果は、壁の中に通気層を設ける通気工法と同じ仕組みです。
通気工法とは、外壁材の内部に溜まっている熱を持った湿気を外に排出する工法です。
外壁材と防水シートの間に通気層を設けることで、断熱性を高めてくれます。

この話からも壁であれ屋根であれ建物本体と外装材の間には空気層が必要だということが分かります。
暑さ対策や冬の寒さ対策、梅雨の湿気対策、全てにおいてより良い環境にするには、通気層を作る住宅にすることが重要です。
また、通気層によって材木の腐食や害虫の発生など、建物の寿命を伸ばすうえでも効果があります。
それでは、それぞれの屋根材について特長や性能について解説していきます。

 

・瓦屋根
屋根材の中で最も断熱性能が高いのが瓦の屋根です。
粘土瓦を葺く工法は、他の屋根材とは違い必然的に下地材との間に通気層ができます。
S字に湾曲した形状で一列ごとに軒先から棟まで空気の通り道があり、温まった空気が軒先から屋根の頂上の棟へと空気が流れていきます。
近年では、地震災害が多い理由から耐震性を考慮する考え方で、重量のある瓦は敬遠されがちですが、断熱性を考えると
昔からある瓦は、理に叶ったとても素晴らしい屋根材です。
確かに屋根が重くなり耐震性が悪くなる側面はありますが、そのぶん耐震補強のリフォームでカバーすれば強い住宅に変化させることは可能です。
古民家や純日本家屋の住宅では、いぶしの和瓦が適しているので耐震性も維持しつつ断熱性の高い瓦による施工は一考の余地があります。

 

・カラーベスト屋根
スレートやコロニアルと呼ばれている屋根材がカラーベスト屋根材です。
日本では、昭和36年に久保田鉄工株式会社(現在ケイミュー株式会社)が販売して以来、軽量性やコストの面から人気となり
大半の住宅の屋根に使われています。
通常厚さが4mmから5mmあり、薄く軽量で耐震性には効果のある屋根材ですが、断熱性には他の屋根材と比べてやや劣ります。
また屋根の下地である野地板とルーフィング(防水シート)の上に隙間なく敷き詰められていますので、空気層はありません。

空気層が無く密着していることで、屋根の熱をダイレクトに小屋裏へ伝えてしまいます。
そのためカラーベストの屋根材の住宅であれば遮熱塗装の検討が必要です。
カラーベストに葺替える場合は、遮熱効果のあるグレードの高い製品を選ぶことをおすすめします。

 

・金属屋根
金属屋根には、トタン屋根やガルバリウム屋根、ステンレス屋根などさまざまな素材があります。
そもそも金属には熱の伝導率が高いという特性があります。
車のボンネットが夏の暑い日は触れないくらいの温度に上昇するのがひとつの例です。。
近年、金属屋根は、屋根材の下に断熱材がついているものが主流になっていますが、その厚みは薄く「断熱効果」としては限定的です。
金属屋根もカラーベスト屋根と同様、軽量で耐震性が高い屋根材であることには変わりはないのですが、断熱性にはやや劣ってしまいます。
また屋根の下地である野地板に密着して施工されているところは、カラーベスト屋根と同様、空気の入る隙間がありません。
そのため金属屋根の場合は、遮熱塗装は必須と言えます。

 

まとめ
今回は、屋根についての暑さ対策を解説してきましたが、現状の屋根をいかに暑さに耐えられる対策をしていくのかがポイントです。
瓦の屋根なら屋根裏に断熱材を施工するリフォームを検討してみます。
一方カラーベストや金属であれば遮熱塗装や断熱塗装を外壁塗装と一緒に考えてみることが必要です。
また全ての屋根に対応できる換気棟をつけることも、夏の暑さ対策には有効です。
ご自宅の屋根のタイプや状況を踏まえて、エアコンを活用しつつ、暑さ対策をリフォームで実現することが
今の時代に合った住宅の考え方のひとつです。