大通りに面して建つ、威容を誇るれんが造の建物
国指定文化財であると同時に、
現在は郷土資料館として活用されている
この建物が経てきた歴史をひとたび振り返ってみよう
明治の香り漂う 瀟洒な町の「シンボル」
秋田市大町通りの一角に建つ赤いれんがの建物。そのシンボリックな佇まいから町の観光名所にもなっている。ここ「赤れんが郷土館」は、赤れんが館・新館・収蔵庫という3つの建物から成る資料館で、そのうち「赤れんが館」は平成6年12月に国から重要文化財に指定されている、史跡としても見どころのある建物だ。
赤れんが館はかつて「旧秋田銀行本店」として明治45年に建てられた。れんが造2階建の外観はルネサンス様式を基調としており、土台は男鹿石の切り石積み。1階が白の磁器タイル、2階が赤れんがで造られており、その色合いのコントラストが優雅だ。かつての貴賓室の壁や柱は総けやき製で、営業室として使われた部屋の天井にはレリーフなどバロック様式の装飾を取り入れているほか、ロビーの腰壁に使用された蛇紋岩やカウンターの散石、床に貼られたイギリス製の色タイル、2階への階段に使われた白大理石、と豪華な用材がふんだんに使用されている。
昭和44年3月まで秋田銀行店舗として実際に使用され、長い間秋田市民に親しまれてきたが、昭和56年5月、秋田銀行は創業100周年を迎えたのを機にこの建物での営業を終了。同年の秋田市制施行90周年を記念し、秋田市に寄贈された。市では明治期の貴重な洋風建築を後世に残すため修復にとりかかった。
活用法については、調査委員会を設置し「市民をはじめ多くの人々に親しまれる施設となるための施設整備を行うこと」、そして「郷土に関する資料の展示、教育普及活動の場として市民に開放し、利用者にいこいの場を提供すること」という意見書が出された。これらをふまえて管理棟を新築したほか、収蔵庫の改修等施設の整備充実をはかり、昭和60年7月31日に「秋田市立赤れんが郷土館」として開館した。その後、平成元年に勝平得之記念館を、平成9年には関谷四郎記念室を設置。さらに平成4年には分館として竿燈をはじめとする郷土の民俗行事や郷土の保存伝承を目的とした「秋田市民俗芸能伝承館(ねぶり流し館)」が開館した。
この「赤れんが館」のように市民に愛されてきた歴史的な建物が、やむなく取り壊されてしまう話は各地にある。その理由は都市開発によるもの、予算面で保全が難しくなったもの、役割を終え維持をする主がいなくなってしまったものなど理由はさまざまだ。しかしこの赤れんが館の場合は、建物の持ち主であった秋田銀行が、秋田市へとしっかり引き継いだこと、それを新たに活用するため広く意見を募り、有意義な活用法を見いだしたことで、今も「町のシンボル」として生き続けている。今も各地で取り壊されている歴史的建造物をひとつでも遺すためにも、この建物が経てきた歴史はよい手本となるはずだ。
さあ「伝設」をその目で見よう!
秋田市立赤れんが郷土館
●住 所/秋田県秋田市大町3-3-21
●開館時間/9:30~16:30
●TEL/018-864-6851
●休館日/年末年始、展示替え期間
●入館料/一般210円
※民俗芸能伝承館との共通観覧料260円
高校生以下無料
https://www.city.akita.lg.jp/kanko/kanrenshisetsu/1003617/1002325.html